損害賠償命令制度 / 訴訟等のコラム

交通事故の損害賠償のキーワード。「損害賠償命令制度」って何?【コラム】

損害賠償命令制度訴訟等

交通事故の被害に遭ってしまった場合に、被害者の権利を守るための制度についてご説明します。

交通事故により重篤な被害を被った被害者にとって、重要な制度として「損害賠償命令制度」があります。
これは殺人事件や傷害事件等、刑事事件の中で特定の犯罪について、刑事裁判の判決が言い渡された後、引き続き民事上の損害賠償に関する審理が行われる制度です。

交通事故被害に遭った場合、この制度を利用できる場合があります。

まず、損害賠償命令制度を交通事故の損害賠償で利用するメリットは、刑事訴訟記録を、刑事裁判終了後に民事責任について審理するための証拠として扱うことができる、つまり、刑事事件とは別個に、民事上の損害賠償請求訴訟を提起するために、改めて刑事記録を取り寄せる必要がないため被害者の立証の負担が軽減されることです。

加えてこの制度を利用する場合、通常の民事訴訟を提起する場合より、一般的に印紙代を安く抑えることができるメリットもあります。

さらに裁判所で損害賠償の内容が議論されることから、そこで議論される賠償の内容については、訴訟外の示談交渉のように、いわゆる裁判基準より低い保険会社基準による議論ではなく、裁判基準での議論が可能です。損害賠償命令制度における決定は、民事裁判における確定判決と同一の効力を有します。

では、どのようにすれば交通事故被害に関して損害賠償命令制度を利用できるのでしょうか。 

交通事故で被害者を死傷させた加害者は、原則として、自動車の運転上必要な注意を怠って人を死傷させた罪である「自動車運転過失致死傷罪」に問われます。

また、アルコールや薬物などの影響によって正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、それによって人を負傷させた場合には、自動車運転過失致死傷罪より法定刑が重い「危険運転致死傷罪」が適用される可能性があります。

これらの罪に問われるような交通事故が発生した場合において、担当検事が加害者について正式裁判を請求した場合、加害者や被害者の意向に問わず、刑事裁判の公判(正式裁判)が行われることとなります。

このような前提のもと、損害賠償命令制度を利用できるのは、まず、加害者について、刑事事件の公判(正式裁判)が行われなければなりません。

次に、刑事事件の弁論手続が終結する前に、裁判所に対して被害者が申立てを行うことが必要です。

その後は手数料として2000円を支払った後、原則として4期日以内の期限を定められた上で、損害賠償に関する決定が行われます。

なお、民事上の損害賠償額について、加害者と被害者の主張に争いが生じ、損害賠償額の決定に時間を要することもありますが、そうした場合は裁判所の判断により、通常の民事訴訟手続に移行します。

また、損害賠償命令制度による決定に異議が申立てられた場合も、通常の民事訴訟手続へ移行します。

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