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交通事故の損害賠償。「合意書(示談書)」「交通事故に関する承諾書(免責証書)」ってどういうもの?【コラム】

示談交渉示談書・合意書

交通事故は日本国内でほぼ毎日どこかで発生しているものです。
交通事故が発生した際に加害者が負う責任には、刑事処分(罰金刑や懲役刑)、行政処分(免許停止や免許取り消し)、民事の損害賠償責任があります。

このうち、民事の損害賠償事件の解決の方法としては、訴訟による解決(判決や裁判上の和解)、訴訟外の解決(任意交渉による示談、交通事故紛争処理センターなどの仲裁機関手続き上の示談など)があります。

示談とは、交通事故などが発生した際、その当事者同士が話し合いをすることによって損害賠償の額や過失割合を合意することです。
合意がなされた後には、被害者が加害者に対して合意された以上の損害賠償を請求することが原則としてできません。

そして、この示談において、「合意書(示談書)」、「交通事故に関する承諾書(免責証書)」というものが作られることがありますが、この「合意書(示談書)」「交通事故に関する承諾書(免責証書)」にはどういった役割があるのでしょうか。

最も重要となる役割は、「示談の結果決定された損害賠償の額を証明する」ということです。
交通事故は事故を起こした側にとっても、起こされた側にとっても非常に重大な事態です。
場合によってはそれまでの生活が一変してしまうほどの影響が及ぼされることもあります。
そうした非常に大きな出来事である分、加害者・被害者を問わずトラブルが非常に発生しやすいのです。

例えば被害者によって示談交渉の内容が不適切だったという主張が出されて後に裁判沙汰になってしまったり、相手と自身の間で示談に関する内容の理解が異なっていたりなど、トラブルは非常に多くあります。

そうしたトラブルを回避するために使用されるのが「合意書(示談書)」、「交通事故に関する承諾書(免責証書)」です。

そして、交通事故当事者が任意保険に加入している場合、「合意書(示談書)」ではなく、「交通事故に関する承諾書(免責証書)」という書類が、「合意書(示談書)」の代わりに作成されます。

「交通事故に関する承諾書(免責証書)」の効果は示談書と同様で、「示談の内容に関して加害者・被害者ともに合意している」ということを証明するもので、交通事故の最終解決の内容を書いた書類となります。

「交通事故に関する承諾書(免責証書)」には、受領金額、交通事故内容(交通事故発生日時、交通事故発生場所、交通事故当事者名)、賠償額の振込先のほか、

「私(被害者)は、下記事故により生じた人身傷害につき、●●保険会より下記金額を受領することにより、甲その他すべての賠償義務者に対する損害賠償請求権を放棄するとともに、今後裁判上、裁判外を問わず何ら異議の申し立て、請求をしません。」という文言が記載されています。

いわゆる「合意書(示談書)」には、両当事者が署名捺印をしますが、「交通事故に関する承諾書(免責証書)」と呼ばれるものは、両当事者ではなく、被害者側のみ署名・捺印をします。
それにより、合意から支払いまでが迅速に処理されます。

交通事故の加害者が任意保険に加入していない場合、「交通事故に関する承諾書(免責証書)」ではなく、「合意書(示談書)」という書類を作成することになりますが、その際には注意しなければならない点があります。

「交通事故に関する承諾書(免責証書)」に署名した後に、保険会社が支払いを拒むことはまずありえません。
しかし、任意保険に加入していない加害者の場合、示談書に署名押印した後に賠償金の支払いを拒んだり、賠償金の支払いが滞ることがありますので、強制執行を行うことが出来るようにしておくとよいでしょう。

「合意書(示談書)」は、加害者と被害者の双方が納得しているということを表すためだけに作られものであり、加害者が示談金の支払いを拒んだり、示談金の支払いが滞った場合には、別途「債務名義」を取得しなければ強制執行を行うことができません。

債務名義とは、確定した判決正本、裁判上の和解が成立した場合や調停が成立した場合に、裁判所が作成する調書の正本、公証人役場で作成した公正証書正本、仮執行宣言付支払督促などです。

裁判や調停を起こすには、時間と手間と労力がかかります。

ですが、公正証書を受けることは比較的労力がかかりませんので、相手方が保険会社ではない場合は強制執行認諾約款付き公正証書にしておくことをお勧めします。

書面に「甲は本契約に規定する金銭債務の支払を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した」という文言を盛り込んだ上で、公証人役場で証明を受けると、加害者が債務不履行を行った際に強制執行を行えるようになるのです。

交通事故が発生してしまった際には、少しの知識で状況を大きく改善することが出来ますから、事故が発生する前に事前に知識として備えておくと良いでしょう。

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