脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)と脊髄の障害 / 脊髄損傷、中心性頸髄損傷 の解決事例

7 シートベルト不着用による過失相殺の主張を排除

脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)と脊髄の障害脊髄損傷、中心性頸髄損傷

後遺障害等級7級4号 :脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)と脊髄の障害 / 脊髄損傷、中心性頸髄損傷 、20代女性、会社員

脊髄(せきずい)損傷
被害者は交通事故時24歳、症状固定時25歳と若年であり、今後平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があるとして、平均賃金を基礎収入として後遺障害逸失利益を算出すべきと主張し、認められました。

被害者が後部座席でシートベルトを着用していなかったことと、損害の発生・拡大との間には相当因果関係がない等と主張し,認められました。

  5,250
万円
保険会社提示額 - 万円
増加額 - 万円

相談内容

父親が運転する車の後部座席に同乗中の交通事故。交差点を直進進行していたところ、右方から赤信号を無視した加害車両が交差点内に進入し、被害車両の右側面に衝突した交通事故事案です。

○○県の交通事故無料相談会でご相談を受けた被害者の方です。

ご相談を受けた際、被害者の方は既に自賠責の事前認定の申請中で、後遺障害等級の認定結果を待っておられました。被害者の方は、脊髄にお怪我をされており、高い等級の後遺障害が認定されるであろうと想定され、今後の方針等についてご説明した後、正式にご依頼を受けました。

争点

争点① 後遺症逸失利益の問題
被害者は事故時24歳、症状固定時25歳。後遺障害逸失利益の算定方法はどうなるのか

※後遺障害逸失利益とは、事故後に後遺障害が残った場合に、労働能力の減少によって将来発生すると認められる収入の減少のことをいいます。

争点② 過失割合の問題
被害者は、後部座席に同乗しており、シートベルトを着用していませんでした。この点、損害保険会社側は、シートベルトを着用していなかったために損害が発生・拡大したとして、過失相殺すべきと主張してきました。


※後遺障害逸失利益は、一般的に、「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間」という計算式により算出されます。

基礎収入については、原則として事故前の現実収入が基礎とされますが、いわゆる「三庁共同提言」の中で、被害者の方が若年である場合(おおむね30代未満)や将来的に平均賃金程度の収入を得られる蓋然性がある場合には平均賃金を基礎とするとされています。  

争点に対する弁護士の主張

争点① 後遺障害逸失利益の問題

後遺障害逸失利益の算出方法について:被害者の方は、交通事故時24歳、症状固定時25歳と若年であり、今後平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があるとして、平均賃金を基礎収入として逸失利益を算出すべきと主張しました。

争点② 過失割合の問題

過失相殺の問題について:シートベルトを着用していなかったことと損害の発生・拡大との間には相当因果関係がないこと等から、過失相殺すべきでないと主張しました。

和解内容

和解金額 今後支払額5250万円

相談から解決までの期間

約10ヶ月(訴訟による解決)

担当弁護士のコメント 担当弁護士のコメント

受任後、後遺障害等級が第7級4号と認定されたことを受け、裁判基準に基づく請求額を確定させて、損害保険会社に対し賠償請求しました。

しかし、賠償金額が高額なこともあり、損害保険会社はなかなか賠償金額案を提示しませんでした。

そこで、今回のケースでは賠償金額が高額なことを考慮し、訴訟提起をすることとしました。

通常、訴訟提起するにあたっては、損害保険会社から賠償金額の提示を受け、争点を把握した後にすることが多いかと思います。しかし、今回のケースのように、損害保険会社が不当に提示を遅らせる場合には、被害者の方のために早期に事件を解決するためにも、争点を予め想定した上で、提示がなくとも訴訟提起をすることも効果的です。

さて、訴訟提起後、相手方弁護士は、後遺障害逸失利益の算定にあたっては被害者の方の事故前年の現実収入を基礎収入とすべきである、また、被害者の方がシートベルトをしていなかった点について20%の過失相殺をすべきである、と主張しました(この他にも争点はありましたが、大きくはこの2点でした)。

これに対して、当方は、逸失利益について、いわゆる三庁共同提言に基づいて、被害者の方には平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があるため、平均賃金を基礎収入とすべきと主張しました。

すなわち、会社員の方の場合、通常は勤続年数に応じて収入が増加する傾向にありますので、勤続後の年数が短い時の実収入額を基礎収入とすると、今後の収入の増加を全く考慮せずに逸失利益を算出することになってしまい、損害額を不当に低く算出することとなってしまいます。そのため、今回のケースでも、被害者の方が若年で勤続年数が短く、今後の昇給の可能性を十分に考慮すれば、平均賃金程度の収入を得られる蓋然性がある等と主張しました。

また、当方は、過失割合について、交通事故態様や車両の破損状況等から、今回の事故態様ではシートベルトの機能はそもそも発揮されない等として、シートベルトを着用していなかったことと、被害者の方の損害の発生・拡大との間には相当因果関係がない等と主張しました。

そして、当方の主張がほぼ認められた賠償金額に達したことから、今後支払額5250万円にて和解をしました。

今回のケースでは、任意交渉ではなかなか損害保険会社が賠償金額の提示をしなかったものの、その後速やかに訴訟を提起することで、裁判としては比較的迅速に和解まで至ることができ、良い解決ができたと思います。

○○さん、大きなお怪我をされてご苦労が多いかとお察ししますが、今後もどうぞお大事になさってください。

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