上肢(肩、腕、肘、手首、手指)の障害 / 下肢(股、膝、足首、足指)の障害 / 大腿骨骨折 の解決事例

64 併合第9級の後遺障害を残した20代男性会社員について、損害賠償額約3600万円にて解決した事案

上肢(肩、腕、肘、手首、手指)の障害下肢(股、膝、足首、足指)の障害大腿骨骨折

後遺障害等級併合9級 :上肢(肩、腕、肘、手首、手指)の障害 / 下肢(股、膝、足首、足指)の障害 / 大腿骨骨折 、20代男性、会社員

①左手関節の機能障害として第10級10号、②左膝関節の機能障害として第10級11号
併合第9級の後遺障害を残した20代男性会社員について、損害賠償額約3600万円にて解決
した事案です。

  3,600
万円
保険会社提示額 - 万円
増加額 - 万円

交通事故状況

被害者は、原動機付自転車を運転して信号機により交通整理の行われている交差点を青信号に従い直進進行中、対向方向より青信号に従い右折してきた四輪車に衝突され、左舟状骨骨折及び左大腿骨内顆骨折等の傷害を負いました。
本件事故の基本過失割合は、被害者15%、加害者85%です。

ご依頼者のご要望

被害者は、自力で歩行することが困難なほどの重篤な傷害を負っており、後遺障害として適切な等級が認定されることや、その後の賠償交渉を依頼したいとご希望され、ご相談に来られました。

受任から解決まで

受任後、当事務所のスタッフが、被害者の通院に同行するなどのサポートを実施し、被害者請求にて後遺障害の申請をしました。
その結果、左舟状骨骨折及び左橈尺骨茎状突起骨折による左手関節の機能障害について第10級10号、左大腿骨内顆骨折及び左脛骨外側骨折による左膝関節の機能障害について第10級11号に認定され、両者を併せて併合第9級に認定されました。

そこで、裁判基準に基づいて損害額を積算し、保険会社との間で賠償交渉を開始しました。

しかし、保険会社は、労働能力喪失率について、症状固定から当初21年間は第9級相当の35%と認定する一方で、その後の20年間は症状に馴化すると考えられるなどとして第10級相当の27%と主張し、また、被害者の過失割合を15%と主張しました。

そのため、当事務所は、交通事故紛争処理センターへと申立てをし、労働能力喪失率は第9級相当の35%を下回らないこと、直近右折の修正要素が適用されるべきことを主張しました。

交通事故紛争処理センターは、当事務所の主張を認め、労働能力喪失率について、症状固定から67歳に至るまで第9級相当の35%と認定し、過失割合について、直近右折の修正要素を適用し、被害者の過失割合を5%と認定しました。
その結果、賠償金額は、保険会社が当初提示した約1980万円から、約2960万円に増額しました。

受任前提示額と解決額

当事務所で受任する前において、被害者は未だ治療中であったため、保険会社から賠償金額は提示されていませんでした。

解決金額は、当事務所にて被害者請求により後遺障害の申請をして既に自賠責保険金を受領しているため、後遺障害第9級自賠責保険金616万円を含めると、約3600万円でした。

労働喪失能力の考え方

本件で、保険会社は、被害者が将来的には後遺障害に馴れていくことが想定されるため労働能力喪失率を低減させるべきである旨を主張しました。

しかし、この「馴化」とは、主に頚椎捻挫等による神経症状が後遺障害として残存した場合において、被害者が神経症状に次第に慣れていくことにより、職務に対する支障の程度が軽減することを指すものです。

他方で、被害者は、左舟状骨骨折及び左橈尺骨茎状突起骨折による左手関節の機能障害について第10級10号が認定され、左大腿骨内顆骨折及び左脛骨外側骨折による左膝関節の機能障害について第10級11号が認定され、いずれも器質的損傷に基づく機能障害が認定されていることから、頚椎捻挫等による神経症状とは異なり、被害者が将来的に後遺障害に馴れていくとはとても想定できません。

実際、主治医も、後遺障害の増悪・緩解の見通しとして、「今後も症状残存する見込みです。」と診断していました。このような事情からすれば、具体的な医証を提出せずに、抽象的に「馴化」の議論を持ち出したとしても、このような保険会社の主張は、妥当とは言えないでしょう。

交通事故紛争処理センターも、当事務所の主張を認め、労働能力喪失率を低減させることなく逸失利益を算出しました。

実務上、保険会社は、認定された後遺障害等級に相当する労働能力喪失率よりも低い労働能力喪失率を主張することが多く見受けられます。

そして、このような場合には、被害者において、後遺障害等級に相当する労働能力喪失率が認められる旨を主張立証する必要があるため、被害者ご自身で対応される場合には、主張立証が不十分であるとして、適切な労働能力喪失率の認定を受けることができないというリスクがあります。

もし、保険会社との賠償交渉にご不安のある方がいらっしゃいましたら、示談される前に、当事務所までご相談下さい。

直近右折

本件事故は、被害者が原動機付自転車を運転して信号機により交通整理の行われている交差点を青信号に従い直進進行中、対向方向より青信号に従い右折進越してきた四輪車に衝突されたもので、基本過失割合は、被害者15%、加害者85%です。

当該事故態様においては、修正要素の1つに「直近右折」があります。

直近右折とは、直進車が至近距離で右折する場合を言い、例えば、対向直進車が通常の速度で停止線を越えて交差点に入る付近まで来ている場合に右折を開始することが挙げられます。

本件において、当事務所は、刑事記録を取り寄せ、加害者が右折を開始した地点から被害車両を発見した地点までの距離と加害車両の速度を前提として被害車両の位置を特定し、加害者が右折を開始した時点において被害車両は既に停止線を越えていた旨を主張立証しました。

その結果、交通事故紛争処理センターは、当事務所の主張を認め、被害者の過失割合を基本過失割合よりも有利な5%と認定しました。

実務上、保険会社は、被害者にも一定の過失が認められる場合、被害者に有利に修正要素を適用することなく、基本過失割合を主張するか、もしくは、被害者に不利に修正要素を適用することが多く見受けられます。

そのため、過失割合が争点となる場合には、被害者は、刑事記録を取り付け、自己に有利に過失割合を修正することができないか精査する必要があります。

もし、過失割合で保険会社と揉めているなどのご事情がありましたら、一度、当事務所までご相談下さい。刑事記録を精査し、交渉のポイントなどをアドバイスさせて頂きます。

担当弁護士のコメント 担当弁護士のコメント

逸失利益を算出するに当たり、労働能力喪失率が低減させることなく、第9級相当の35%と認定されました。
また、直近右折の修正要素が適用され、被害者の過失割合が基本過失割合よりも有利な5%と認定されました。