下肢(股、膝、足首、足指)の障害 / 膝関節捻挫 の解決事例

57 後遺障害第14級9号の主婦の休業損害について、保険会社提示額29万円から167万円へ増額した事案

下肢(股、膝、足首、足指)の障害膝関節捻挫

後遺障害等級後遺障害別等級14級9号 :下肢(股、膝、足首、足指)の障害 / 膝関節捻挫 、60代女性、主婦

左膝神経症状
保険会社の当初提示額約140万円から最終受領額約230万円に増額した事案です。

  465
万円
保険会社提示額 189 万円
増加額 276 万円

交通事故状況

青信号に従い横断歩道上を歩行中に、自動車に衝突されました。

ご依頼者のご要望

相手方保険会社提示の主婦の休業損害の金額などについて、妥当かどうかご相談を受けました。

受任から解決まで

被害者は、事前認定により、左膝関節捻挫後の左膝関節痛等の症状について、「局部に神経症状を残すもの」として自賠責後遺障害第14級9号に認定され、保険会社から休業損害や慰謝料等の示談金額案の提示を受けていました。

ところが、保険会社提示の金額は、弁護士が交渉した場合のいわゆる裁判基準より相当低い金額でした。

このため、当事務所は、相手方保険会社に対し、休業損害、通院慰謝料、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料について裁判基準で請求して、休業損害や慰謝料の増額交渉を行い、任意交渉で、ほぼ裁判基準満額で解決しました。

受任から解決まで約2週間でした。

示談交渉

相手方保険会社が、当初被害者に対して提示した賠償金額と、弁護士が交渉して解決した賠償金額は、次のとおりです。

賠償項目 保険会社提示額 解決額 増加額
休業損害 29万円 167万円 138万円
通院慰謝料 85万円 111万円 26万円
後遺障害逸失利益 後遺障害慰謝料 75万円 187万円 112万円
最終受領金額 189万円 465万円 276万円

増額交渉のポイントは次のとおりです。

休業損害については、次の項目で詳しく説明します。

通院慰謝料:保険会社基準の低い金額から、裁判基準(赤い本通院慰謝料別表Ⅱ)の慰謝料へ増額。

後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料):合計で112万円増額。

後遺障害第14級の損害について、保険会社は第14級自賠責保険金の金額である75万円を提示していました。

当事務所は、主婦の逸失利益として、賃金センサス女性学歴計全年齢平均の3,547,200円を基礎収入として(いわゆる裁判基準)、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間5年を適用し、約77万円を賠償請求しました。

また、第14級後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)として、裁判基準の110万円を賠償請求しました。

主婦の休業損害

本件では、主婦の休業損害が大きな争いとなりました。

休業損害とは、消極損害(得べかりし利益)の一種であり、一般に、被害者が交通事故により受けた傷害の症状が固定するまでの療養期間内に、傷害及びその療養のため休業し、又は十分に稼働することができなかったことから生ずる収入の喪失をいいます。

休業損害の賠償金額は、一般に次の計算式により算出します。

 [計算式]  事故前の収入(基礎収入)の日額×休業日数

主婦の休業損害については、基礎収入及び休業日数の評価が問題となります。

まず基礎収入について、保険会社は自賠責基準の日額5,700円を提示する傾向にあります。

ところが、いわゆる裁判基準では、賃金センサスの女性学歴計・全年齢平均賃金を採用するため、9,718円/日(平成24年賃金センサス)となります。

このため、保険会社が利用する自賠責基準と裁判基準の差額は、日額3,000円以上になります。

次に休業日数について、保険会社は、通院実日数の半分程度あるいはそれ以下を提示します。

他方で、裁判基準では確立した基準はないものの、通院期間の全期間を休業期間として評価し、休業日数を割合的に認定する方法とすることがあります。

本件の主婦の休業損害について、①保険会社による提示額(示談金額案)、②弁護士による賠償請求額及び③解決額は次のとおりです。

①保険会社による主婦の休業損害の提示額(示談金額案)  

日額5,700円×休業日数51日(通院実日数の半分)=29万円

②弁護士による主婦の休業損害の賠償請求額

休業期間288日(全通院期間)

日額9,718円×72日×100%=70万円

日額9,718円×72日× 75%=53万円

日額9,718円×72日× 50%=35万円

日額9,718円×72日× 25%=17万円

合計175万円を請求

③弁護士が交渉した主婦の休業損害の解決額

167万円で解決弁護士による賠償請求額175万円の95%で合意)

担当弁護士のコメント 担当弁護士のコメント

主婦の休業損害について、保険会社は被害者に対し、本来認められる金額より低い金額を提示します。

また、主婦の休業損害に関して、休業期間の評価方法が確立していないこともあって、保険会社の低い示談金額案に応じてしまっている被害者の方も多いと考えられます。  

主婦の休業損害について、保険会社の示談金額案と弁護士が交渉した場合の賠償金額には大きな乖離が生じる傾向にありますので、保険会社による示談金額案に不安な被害者の方は、交通事故の損害賠償に詳しい弁護士へご相談されることをお勧めします。

交通事故事案における主婦の休業損害の認定基準について詳しくはコチラ