死亡事故 の解決事例

106 事故当時79歳主婦の逸失利益について、年齢別平均ではなく全年齢平均が基礎収入と認定された事案

死亡事故

死亡事故 :死亡事故 、70代女性、主婦

  4,530
万円
保険会社提示額 2,140 万円
増加額 2,390 万円

交通事故状況

被害者は、道路を横断していたところ、四輪車に衝突され、外傷性血胸などの傷害を負い、お亡くなりになりました。

ご要望

被害者のご遺族は、妥当な賠償金額を受領することをご希望されていました。

受任から解決まで

ご遺族の方から受任後、保険会社に対して、損害賠償を請求しました。

保険会社は、被害者の逸失利益について、被害者が事故当時79歳と高齢であったことから、年齢別平均賃金である約280万円を基礎収入とすべき旨を主張しました。

当事務所は、被害者は夫の介護を行うなど、若年の主婦と比較して遜色なく家事労働に従事していたことから、全年齢平均賃金である約350万円を基礎収入とすべき考え、訴訟を提起しました。

裁判所は、後述する通り、当事務所の主張を認め、全年齢平均賃金を基礎収入として認定しました。

その結果、保険会社提示額は最終支払額約2140万円でしたが、最終支払額約4530万円にて解決に至りました。

 

解決のポイント

被害者は事故当時79歳と高齢でしたが、逸失利益を算定するに当たり、全年齢平均賃金が基礎収入として認められました。

 

基礎収入

死亡による逸失利益は、「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」により算定されます。

この点、家事従事者の基礎収入は、女性労働者の全年齢平均賃金が採用されますが、被害者が高齢の場合は、全年齢平均賃金が割合的に認定されるケースや、年齢別平均賃金が採用されるケースが多く見られます。

今回のケースでは、被害者が事故当時79歳と高齢であったことから、全年齢平均賃金を採用するか、もしくは、年齢別平均賃金を採用するかが争点となりました。

当事務所は、被害者が夫の介護などの家事労働を十分こなしていたことなどから、全年齢平均賃金を採用すべき旨を主張しました。

裁判所は、被害者が「本件事故発生当時、大きな病気を患うことはなく、Aと同居して、1人で、炊事、洗濯及び買い物等の家事に従事していたこと」、「本件事故発生当時に認知症患者のAの身の回りの世話をしてAを介護して、Aが経営する店を代わりに経営するなどしており、さらに、B及びCのためにも食事を用意するなどして、家事に従事していたことを認めることができ」、「生涯を通じて、賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性があったと認めることができる」として、「原告らの主張を採用して、平成24年賃金センサス女性学歴計全年齢平均の年額354万7200円であると認める。」と判示しました。

このように、家事従事者の基礎収入を認定するに当たっては、被害者の年齢のほか、被害者が事故当時どのような家事労働に従事していたかを丁寧に検討する必要があります。そうすると、ケースによっては、今回のケースのように、被害者が高齢であったとしても、年齢別平均賃金ではなく、全年齢平均賃金が基礎収入として採用される可能性があると言えます。

なお、本件は、自保ジャーナル1983号に掲載されておりますので、是非ご一読下さい。