頸椎捻挫(ムチウチ)・腰椎捻挫 の解決事例

63 事故による「右」上肢・下肢の症状について、事故前の脳梗塞により「左」半身麻痺があったとして自賠責で後遺障害非該当とされた被害者について、訴訟提起し、裁判所が後遺障害第14級相当と認定した事案

頸椎捻挫(ムチウチ)・腰椎捻挫

後遺障害等級後遺障害別等級14級号 :頸椎捻挫(ムチウチ)・腰椎捻挫 、40代男性、会社員

神経症状
事故による「右」上肢・下肢の症状について、事故前の脳梗塞により「左」半身麻痺があった
として自賠責で後遺障害非該当とされた被害者について、訴訟提起し、裁判所が後遺障害
第14級相当と認定した事案です。


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交通事故状況

四輪車を運転中、路外より道路に進入してきた車両に衝突され、頚椎捻挫及び腰椎捻挫等の傷害を負いました。

ご依頼者のご要望

被害者は、事故前、脳梗塞を患っており、左半身に麻痺を残していました。そ
のため、自賠責保険は、被害者には脳・脊髄の中枢神経系の障害として第9級10号以上に該当する既存障害があるため、頚椎捻挫による右上肢の痺れ、腰椎捻挫による右下肢の痺れ等の症状は加重障害に当たらないとして、後遺障害には該当しないと判断しました。

そこで、被害者は、頚椎捻挫による右上肢の痺れ、腰椎捻挫による右下肢の痺れ等の症状について、後遺障害として認定されることをご希望され、当事務所に相談に来られました。

受任から解決まで

当事務所にて受任後、一般財団法人自賠責保険・共済紛処理機構に対して、後遺障害の認定を求めて紛争処理の申立てをしました。

しかし、同機構は、被害者に残存した症状と事故の相当因果関係が認められないとして、紛争処理の申立てを認めず、「中枢神経系の既存障害を有する被害者が末梢神経による障害を残した場合、加重障害に該当するか否かを検討することなく、末梢神経による障害を後遺障害として認めるべきか」という点について、実質的な判断を回避しました。

そこで、当事務所は、司法の判断を求めるべく、訴訟を提起しました。

裁判所は、下記【既存障害として中枢神経系の障害を残す場合の後遺障害の認定方法とその問題点】欄にて記載した通り、当事務所の主張を認め、頚椎捻挫による右上肢の痺れ、腰椎捻挫による右下肢の痺れ等の症状について、第14級相当に該当するとの判断を示し、裁判上の和解にて解決しました。

既存障害として中枢神経系の障害を残す場合の後遺障害の認定方法とその問題点

基発第0808002号平成15年8月8日「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」によると、中枢神経系に分類される脳・脊髄の損傷による障害は、複雑な症状を呈するとともに身体各部にも様々な障害を残すことが多いことから、中枢神経系の損傷による障害が複数認められる場合には、末梢神経による障害も含めて総合的に評価し、その認定に当たっては、神経系統の機能又は精神の障害の障害等級によるとされています。

今回のケースでは、被害者は、事故前に脳梗塞を患い左半身に麻痺を残しており、これは、中枢神経系の障害として、第9級10号以上に該当すると考えられます。

そこで、被害者が、その後、頚椎捻挫及び腰椎捻挫等の傷害を負い、右上肢の痺れ、右下肢の痺れ等の末梢神経による障害を残存させた場合に、末梢神経による障害が後遺障害として認定されるか否かがポイントとなります。

この点、上記基準から形式的に考えると、このような末梢神経による障害は中枢神経系の障害に含めて評価されるため、加重障害(加重障害とは、事故前から障害が残存していたところに事故によって新たに障害が加わった結果、現存する障害が既存の障害の程度よりも重くなった状態のことを言います。)に該当しない限り、後遺障害として認定されないとも考えられます。

自賠責保険は、このような理由により、頚椎捻挫による右上肢の痺れ、腰椎捻挫による右下肢の痺れ等の症状が後遺障害には該当しないと判断しました。

しかし、既存障害と事故により残存させた障害を詳細に検討すると、被害者は、「右」脳梗塞を患い「左」半身に麻痺を残していましたが、事故により頚椎捻挫及び腰椎捻挫等の傷害を負い、「右」上肢の痺れ及び「右」下肢の痺れ等の症状を残存させており、「左」と「右」で症状が生じている部位が異なっています。

そうすると、このような場合まで上記基準を用いて十把一絡げに後遺障害に該当しないと結論付けることは、個別具体的な事情を十分考慮しておらず、妥当な結論とは思われません。

そこで、当事務所では、「右」脳梗塞の場合には、「左」半身しか症状が生じず、「右」半身には症状が生じないため、上記基準が前提とする「複雑な症状を呈するとともに身体各部にもさまざまな障害を残すことが多い」に該当しないことから、末梢神経による障害を中枢神経系の障害に含めることなく後遺障害として評価すべきであること、また、「左」半身と「右」半身は同一の部位ではないことから、加重障害に該当するか否かを考慮することなく、後遺障害として評価すべきであることを主張しました(後者の主張は、例えば、過去に頚椎捻挫により「右」上肢の痺れを残存させて第14級9号の後遺障害を認定された被害者について、後日、別の交通事故に遭い、頚椎捻挫により「左」上肢の痺れを残存させた場合には、両者は、「同一系列」に属するものの、「同一の部位」ではないことから、別途、末梢神経による後遺障害の認定対象となります。)。

そして、裁判所は、当方の主張を認め、被害者に第14級相当の後遺障害が認められるとの判断を示しました。

今回のケースで、裁判所は、中枢神経系の既存障害を有する被害者が末梢神経による障害を残した場合において、末梢神経による障害を中枢神経系の障害に含めることなく後遺障害として認めました。

このことは、既存障害として中枢神経系の障害が存したとしても、既存障害の内容、症状が生じている部位などを子細に検討することにより、上記基準を適用することなく、現存障害が末梢神経による障害として認定される可能性があることを認めたものとして、大変意義のある事案です。

もし、同じような問題でお困りの方がおられましたら、ぜひ一度、当事務所までご相談下さい。

担当弁護士のコメント 担当弁護士のコメント

中枢神経系の既存障害を有する被害者が末梢神経による障害を残した場合において、加重障害に該当するか否かを検討することなく、末梢神経による障害が後遺障害として認められました。